<6話 演出家に伝えなかったきっかけ変更事件>
1985年つかこうへい「ソウル版熱海殺人事件」大阪近鉄劇場小ホールの出来事です。
後半、最後の方の音のきっかけが私はしっくりいっていませんでした。
そこで照明の服部基さんに、
「あそこの音のきっかけはこっちの方が良くない?」
と相談しました。服部さんも、
「俺もそっちの方がいいと思う。あかりもそっちで変えるよ」
と二人だけで盛り上がり、きっかけを変更しました。
私はつかさんにこのきっかけ変更を伝える事をすっかり忘れてしまいました。そして本番になり、その部分が来ました。変更したきっかけで音を出し、照明も派手に変化しま した。
ドカドカドカドカドカ・・・
つかさんの走ってくる足音が近づいています。
「何が起こったんだ!」
「すみません。服部さんと相談して、こっちの方が良いと話したのをつかさんに伝えるのを忘れてました」
「・・・そうか」
つかさんはゆっくりと音響調整室から出て行かれました。
そして以降の舞台はきっかけ変更したままで千秋楽までいきました。
本当にこれで良かったのでしょうか?