<17話 グルジア珍道中① エクソシスト現る!事件>
コンサートで旧ソ連のグルジアに行ったときにこの事件は発生しました。
現地到着してすぐにグルジア文化省の方々との歓迎会があり、皆アルコールに酔いしれていました。私は下戸ですのでノンアルコールでおつき合いしていました。この時照明家のYさんは70~80度はあるウォッカをガンガン飲んで交流を暖めていらっしゃいました。
宴会が終わりホテルの部屋へ戻りました。私はYさんと同室でした。
就寝して夜中の2時頃隣のベッドで何か水の音がしたような感じがしました。
「じょー、びしゃびしゃ、びしゃびしゃ・・・」
あまり気にもせずそのまま寝ていると、いきなりYさんが素っ裸で私のベッドに潜り込んできました。
「何すんだよ!」
私は飛び起きてYさんの頬をひっぱたき、引きずり下ろしました。
「何考えてんだよ!」
Yさんはちいちゃくなって正座し
「ぼくちゃん、さむい。ぼくちゃん、さむい」
「はぁ?」
「ぼくちゃん、さむい。ぼくちゃん、さむい」
まるで4,5歳の子供です。
「大丈夫か?どうした!」
「ぼくちゃん、さむい。ぼくちゃん、さむい」
「わかった、わかったから俺のベッドを使え」
と隣のベッドを見ると水びたしでした。でもなんか臭うのです・・・。
仕方がないのでソファーで寝ることにしました。それから約1時間後
「ウォー、ガオー、ゲゲゲゲ、????」
奇声で目をさまされ、さらに訳の分からない言葉(何語か分かりませんがちゃんとした言葉でした)でわめいているのです。私は思わずYさんの体が浮いているのではないか、口から緑の液体を流していないかとベッドを見ましたが、その気配はありませんでした。
しかし
「ウォー、ガオー、ゲゲゲゲ、????」
は全然収まりそうにありません。
「これはエクソシストだ!」
私は怖くなって部屋から出てホテルのロビーで寝ました。
翌日、Yさん本人はケロリとしホテルのメイドさんに後始末を依頼し、仕事場に向かい仕込みをしました。
2日目の朝はYさんが先に出かけたのかいませんでした。私は一人で劇場に向かい残りの作業をしていると、Yさんは1時間ぐらい遅れて劇場入りして、黙々と仕事をこなしていました。
3日目は初日で無事幕が開いたのですが、Yさんは
「誰が仕込んだの?」と聞いてくるではありませんか。
「えっ?」
「Yさん、自分で仕込んでたよ」
「ちゃんと仕込んでるね。でも全然覚えていないんだけどなぁ」
「????」
本場のウォッカは本当に恐ろしい酒です。
子供還りの状態をおこし、さらに前世(?)の人格が現れその人格の言葉をしゃべり、そしてまる2日間普通に仕事をこなしているのに記憶がされないのですから。
教訓:ウォッカを飲み過ぎるとエクソシストになります。