<14話 福岡メルパルクで開演21時>
つかこうへい作、演出「幕末純情伝」の福岡公演のため役者、スタッフは朝8時に羽田に集合するため自宅を朝6時半に出ましたが、あたり一面大雪!
「飛行機は飛ぶのかな?」と心配しながら羽田へ。
案の定出発の時間になっても搭乗案内がありません。
9時に欠航のアナウンス。
その日は当日仕込み、夜本番の公演でした。
あわてて全員東京駅へ。新幹線ホームは人であふれかえっていました。もちろん指定席などありません。なんとか立ち席で13時に東京を出発しました。
福岡着は午後7時。全員「こりゃ公演中止だ」とのんびりしていました。ところが制作の武藤さんが「機材車は10時に劇場に着いている。絶対に幕を開ける」と言い放ちました。皆唖然とし、急遽新幹線から劇場へ電話をして(当時は携帯電話などありません)劇場の音響さんと仕込みの打ち合わせ。あらかじめ仕込み図を送ってあったので簡単な打ち合わせで済みました。大きな問題はテープレコーダーとミキサー卓設置の位置関係でした。この部分は図面にはなかったのです。
「この電話の打ち合わせで大丈夫ですか?」
「大丈夫です。まかせて下さい。分からなくなったら新幹線へ電話します」
「よろしくお願いします」
と音響の全仕込みを劇場の音響さんにお願いすることになりました。
新幹線は雪で遅れ結局劇場には8時頃到着しました。仕込み状況を見ると完全に仕込んでありました。本当にありがたいと思いました。とりあえずテレコのレベル調整をやっていると「おい!幕あけていいか。客は帰らずに待ってるそうだ」と舞台監督の声が。
全然OKでないのに「OKです」と答えていました。腹をくくりました。
午後8時45分に主役の西岡徳馬さんが緞帳前で開演時間の遅れのお詫びをしている間に私は「気合いで押し切って行こう」と心に決め、客電が暗転になってM1のスタートボタンを押しました。何と!ぴったりのデータ通りの音量と音質の音が出ました。
「気合いの入れ方で物事は自分の思った通りに動く」ということを初めて覚えました。当然劇場の方のお力に対しての感謝の気持ちは忘れませんでした。
その後問題なく進行し緞帳は閉まりました。終演時間は午前0時になっていました。その間帰られた方は3人ぐらいで他のお客様は最後まで観劇されました。その時間では帰りの足は無いのにみなさんどうなさったのでしょうか?本当に心配になりました。